2019年09月22日
眠狂四郎魔性剣
1965年 大映
安田公義監督 星川清司脚色 柴田錬三郎原作 竹村康和撮影 斎藤一郎音楽 市川雷蔵 瑳峨三智子 長谷川待子 明星雅子 穂高のり子 若松和子 須賀不二男 北城寿太郎 五味龍太郎 水原浩一 浅野進治郎 稲葉義男 伊達三郎 橋本力 木村玄 藤川準 橘公子 小村雪子 荒木忍
・武家育ちの娘・佐絵は、狂四郎の辱かしめをうけて自殺した。翌日、狂四郎のもとに、大工の娘・お糸が佐絵の遺書と共に、その子鶴松を連れてきた。鶴松は、岩代藩の城主と、そのころ御殿女中であった佐絵との間にできた隠し子で、城主は一度は邪魔者扱いにして追放したものの世継ぎの出来ぬ今は、力づくで連れ戻そうとしていた。狂四郎は、お家のためには、幼い子供の将来をふみにじる武士道に激しい、いきどおりを覚えた。そんな狂四郎は、以前ふとしたことから斬りすてた伴蔵の妹おりんにつきまとわれていた。一方岩代藩の江戸家老・菊村外記は、そんな狂四郎の動勢を察して、いちはやく鶴松を捕え、岩代藩随一の使い手・赤石群兵衛を狂四郎にさしむけた。
・ストーリー自体はつまらなくはないのだけど、キャストがまた(僕にとっては)マイナーになってしまった。瑳峨三智子なんてのはそれなりなのだろうけど、僕には馴染みが無く、しかも役柄 おりん があまりにも嫌らしい(色気でなく嫌悪の方)キャラで、何故か最後まで彼女を殺さないのだけど(自分が斬った相手の妹だからか)、早々と彼女を殺しておけば、何人の命が助かったことか。このシリーズは悪人もどんどん殺すけど、善人も死んでしまうから始末が悪い(今回も助かったのは鶴松と老臣中森瀬左衛門だけで、その娘まで死んでしまう)。
・ところで、このシリーズの狂四郎は圧倒的に強い。その特徴はほとんど一刀のもとに斬り捨てていくことで、数十人に囲まれたチャンバラ・シーンでも実際のチャンバラ(刀と刀がぶつかる音)が1〜2回しか聞こえないのだ。絶対的強さ。本作においては網をかけられてかろうじて捕まるが、それか毒を盛られるくらいしかテはないのだ(毒は本作では使われないが、性懲りも無くこれまで数度引っ掛かっている)。そういえば、本作では花火師による爆弾が使われるが、これはどうやってたすかったのだろう? それと彼に提灯を渡した姉弟は(さすがにこの二人は死ななかった)どういう立場だったのか。せめて少しは騙すシーンを描いてくれないと、彼女達も仲間に見えてしまう。
・本作はキャストも含めて小粒な作品に感じたが、しかし前述の網や爆弾も含めて様々な小細工が使われていて、それなりには楽しめる。その代わり、クライマックスの決闘(円月斬り)のシーンは冴えなかったけど。折角相手が上位に位置をとったのだから、もう少し丁寧に描いて欲しかった。