ようこそ hirot'sBlog へ

2004/11/25
本BLOGの公開を
開始しました。
映画は、今世紀に入って
ほとんど劇場では
見ていません。
主にDVD、CS、BS放送
による観賞です。
表題後ろにあるのが評価で、
前は客観点(出来の良さ)、
後は主観点(好き嫌い度)。
A-Eにするつもりですが
客観・主観とも
Cが及第点として、
Aが最高評価
Eが最低評価
とお読みください。
よろしくお願いします。

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hiro


2021年01月

2021年01月31日

若草の頃

1944年 アメリカ Meet Me in St. Louis
ビンセント・ミネリ監督 アービング・ブレッチャー/フレッド・F・フィンクルホフ脚色 サリー・ベンソン原作 アーサー・フリード製作 ジョージ・J・フォルシー撮影 ジョージー・ストール音楽 ジュディ・ガーランド マーガレット・オブライエン メアリー・アスター ルシル・ブレマー トム・ドレイク マージョリー・メイン レオン・エイムズ ハリー・ダベンポート ジューン・ロックハート ヘンリー・H・ダニエルズ・Jr. ジョーン・キャロル

セント・ルイスの市民達は皆、自分たちの町に深い愛着を持っていた。弁護士アロンゾ・スミス一家とて、想いは同じである。1903年夏、スミス家の次女エスター(ジュディ・ガーランド)は、兄のロン姉のローズ(ルシル・ブレマー)たちのように恋人が欲しい。彼女は今度隣に越して来たジョン・トゥルーエット(トム・ドレイク)を想っている。スミス家で開かれたロンの大学入学の送別会でエスターは、いろいろ画策し、やっとジョンと親しくなれた。そして秋、エスターは妹アグネスとトゥーティ(マーガレット・オブライエン)の悪戯から誤解して、ジョンと大喧嘩をした。だがこれは二人の気持ちを一層結びつけた。ところが突然、父アロンゾはニューヨークに転勤をめいぜられ、近く一家は移転することになった。

・こちらはジュディ・ガーランドの有名作で、これも内容は忘れていても再見と思い込んでいたら、見てみたら初見だった。そして「ベル・オブ・ニューヨーク」が中身が無くてもミュージカルとして成立しているのに対し、こちらはしっかりとした中身があって見事なミュージカル、そしてドラマとなっている。
・あまりに見事で、付録の音声解説で見直してしまったのだが、この映画化はかなり難航したらしい。中身はあるものの、あまりに平凡な家族の物語がヒットするとは思えなかったのだ。しかし裏話として、アーサー・フリードが家族の話(彼自身がすごせなかった)に固執して作られたという。ちなみに、アーサー・フリードはあまりに有名な製作者ではあるが、元々作詞家から出発してミュージカル製作者として名を成した、ちょうどダリル・ザナックが脚本家から成り上がったのと同様、叩き上げの製作者であることを知った。そして本作は、驚くべきことに「風と共に去りぬ」以上の成功作となったのだ(知名度ではなく、興行成績として。そして、ジーン・ケリーが最も愛すべきミュージカルとし、マーティン・スコセッシがこの作品から映画の構成を学んだと言わしめた)。
・ジュディ・ガーランドが後の夫ヴィンセント・ミネリと出会った作品、共演はルシル・ブレマー(姉役)に、メアリー・アスター(母親役)、そして何より、マーガレット・オブライエン(末妹)。ガーランドは最初、マーガレットとの共演を嫌がったという。子役に喰われることを怖れたのだ。そしてある意味、それは当たっていた。彼女はこの映画でアカデミー最優秀子役賞(今でもあるのかな?)を受賞してしまうのだから。実際、この子役の演技は凄い。ジュディ・ガーランドがあらゆる場面で素晴らしくとも、マーガレット・オブライエンは彼女のパートであらゆる観客の心をつかんでしまっただろう。これもまた音声解説に夜が、この映画の原作者の投影は、マーガレットとジュディの間に挟まれたジョーン・キャロル(アグネス)であり、マーガレットのパートの多くはアグネスのものだったのだが(実際、彼女も演技した)、結局、多くがマーガレットのものとなってしまったという。ジョーン・キャロルも好演しているのだが、見せ場は失われてしまっている。
・ちなみに、マーガレット・オブライエンは僕の記憶に焼き付いている「若草物語」より前の出演作で(同じメアリー・アスターが母親役で、この「若草の頃」で、ステージ・ママの実母が不在の時は彼女の撮影に関わるいたずらにスタッフは悩まされたというが(例えばフォークとスプーンの位置を逆にしてしまって撮り直さなければならなかったとか)、唯一、彼女をたしなめられたのがメアリー・アスターという。この音声解説で老女となったマーガレット自身が告白している)。そして本作における彼女のキャラは病弱でか弱いものと対照的なキャラなのだ。
・ここに描かれたハロウィンの描写はあえてカットしなかった(ガーランドの歌も含めて多くのシーンが長さの関係でカットされたという。当時、ディレクターズカットがなかったのが恨めしい)のは、現在に至るハロウィンの風景とは違っていたものを残したかったからだという。現在は「トリック・オア・トリート」という合い言葉で、お菓子を貰う儀式になっているが、当時は小麦粉を持っていって、玄関から出てきた人に小麦粉を浴びせることによって<殺す>儀式だったらしい。近所の子供達で最も小さく、ミソッカス的扱いだったマーガレットはあえて一人で最も恐ろしい隣人にこの儀式を行うという難行に挑戦する描写が素晴らしいのだ。
・このように、ついついマーガレット・オブライウンの好演ばかり書いてしまったが、勿論、主演のジュディ・ガーランドが全体を貫いており、部分的マーガレットと違い、ジュディはそのマーガレットも受けて、全体で素晴らしい。(そして部分的にはそのジュディを姉役のルシールが凌いでいるシーンもある)
・正直、先日(そしてまたミュージカルを見たくなった)「ジュディ」を見た後なので、映画の外ではジュディはどんなだったのだろうと想像してしまうが、そんな不安は本作の中では微塵も無い。(実は実際、彼女はそれまで似たような役ばかりでうんざりしていたそうだが、本作で一時的にも解消されたようだ)
・それに共演を嫌ったマーガレットとの関係も良好で、彼女はもしかしたら、彼女自身も遠ざかっていた幸せな家庭を、本作の中で味わっていたのではないか。
・冒頭でも書いたが、「ベル・オブ・ニューヨーク」がドラマとして陳腐でも見応えある作品であったのに対し、本作は幸せな家族の平凡な日常が見事に描かれた中身のあるドラマとして素晴らしい作品になっている。

・音声解説で知ったいくつかのこと。本作のミュージカル指導は、まだ監督になる前のチャールズ・ウォーターズ(「ベル・オブ・ニューヨーク」の監督!)が行っており、父親役のレオン・エイムズが歌うシーンの吹替えはアーサー・フリード自身が行っている。アーサー・フリードは本作により実績を得て、後のミュージカルの帝王たるいわゆるフリード組を作り上げたという。



hirot15 at 22:36|PermalinkComments(0) 洋画 

2021年01月30日

15年後のラブソング

2018年 アメリカ・イギリス合作 Juliet, Naked
ジェシー・ペレッツ監督 ニック・ホーンビィ原作 エフジェニア・ペレッツ/ジム・テイラー/タマラ・ジェンキンス脚本 レミ・アデファラシン撮影 ネイサン・ラーソン音楽 ローズ・バーン イーサン・ホーク クリス・オダウド アジー・ロバートソン アユーラ・スマート リリー・ブレイジャー フィリップ・デイビス デニース・ゴフ リリー・ニューマーク

イギリスの港町サンドクリフ。博物館で働く30代後半の女性アニーは、長年一緒に暮らす腐れ縁の恋人ダンカンと平穏な毎日を送っていた。そんなある日、彼女のもとに1通のメールが届く。送り主はダンカンが心酔するミュージシャンで、90年代に表舞台から姿を消した伝説のロックスター、タッカー・クロウだった。

・序盤はいまいちなんだけど、タッカーがからんできたあたりから俄然面白くなる。そして病院で一族集結シーンは見事。
・伝説のロック・スター本人であるタッカーと、そのタッカーを崇拝するダンカンのすれ違いのシーンが実に興味深い。曲は作ったもののものであるか、聴く側のものであるかという本質的問題がさらされる。一見的外れのダンカンの側に一理あると思わざるをえないところが上手い展開。
・結末もまた心地よかった。
・ついでに、タッカーが曲を披露する感動的シーンのウケとしての<オマケ>のダンカンの評も笑えた。



hirot15 at 22:34|PermalinkComments(0) 洋画 

2021年01月29日

午前0時、キスしに来てよ

2019年 松竹
新城毅彦監督 みきもと凜原作 大北はるか脚本 小宮山充撮影 林イグネル小百合音楽 片寄涼太 橋本環奈 眞栄田郷敦 八木アリサ 岡崎紗絵 鈴木勝大 酒井若菜 遠藤憲一 野田理人 宇佐卓真 内藤秀一郎

優等生の花澤日奈々は、まじめすぎる性格で周りから一目置かれる存在だが、本当は王子様と恋に落ちるおとぎ話のような恋愛にあこがれる夢見がちな女子高生だった。ある日、日奈々の高校に国民的人気スターの綾瀬楓が映画の撮影でやってきた。エキストラとして参加することになった日奈々は、楓の飾らない素顔とやさしさに魅せられ、楓も日奈々の裏表のない実直さに次第にひかれるようになり、芸能人と一般人の誰にも知られてはいけない秘密の恋がスタートする。思いもよらぬ障害が2人に降りかかる中、日奈々をひそかに思い続けてきた幼なじみの浜辺彰が楓に宣戦を布告してくる。

・ほとんど期待していなかったけど、予想外、心地よい作品だった。EXILE関係に興味は無いので主演の片寄涼太も知らないけど、役柄からか好感の持てる美男子だが、劇中のグループメンバー(同じEXILE?)が同じ顔に見えてちょっと戸惑った。一方の橋本環奈もほとんど興味が無かったし、これまでの出演作でもあまり引っ掛からなかったけど、今回はとても好感が持てた。冒頭のインテりぶり(ちょっと橋本環奈に見えなかった)と本編に入ってからのいつもの橋本環奈の差にちょっと驚いた。
・物語は主演の二人に各自ライバルが存在するのに、それがほとんど障害にならないので、クライマックス以外はほとんど起伏が無いのに、だからか、心地よく見れる。もっともライバル役の眞栄田郷敦が大人し過ぎてインパクトがないのは物足りなかった。一方の八木アリサは方言(アクセント?)が気になった。役作りなんだろうけど、美人芸能人がそれでいいのだろうか、って。酒井若菜も面白い役柄(娘と仲がいいのだけど、実は義理の関係で、彼女が実は遠慮していることに悩んでいる)だけど、これもまたクライマックス以外に出番が少ないのが残念。もう少し日常描写があれば良かったのに。遠藤憲一も好演しているが、彼もまた少し突っ込みが少ないと思った(君のゆく道・・・と歌唱は良かった)。それら、総ての突っ込み不足が逆に本作を心地よい感触にしているのだろう。
・そういえば、彼女の幼い妹がむっちゃ可愛く、彼女の出番ももっと欲しかった。(お姉ちゃん、王子様が来たよ)



hirot15 at 22:33|PermalinkComments(0) 邦画 | 青春・恋愛

2021年01月28日

若草物語(1949)

1949年 アメリカ(MGM) Little Women
マービン・ルロイ監督&製作 アンドリュー・ソルト/サラ・Y・メイソン/ビクター・ヒアマン脚本 ルイザ・メイ・オルコット原作 ロバート・プランク/チャールズ・エドガー・シェーンバウム撮影 アドルフ・ドイッチ音楽 ジューン・アリソン ピーター・ローフォード マーガレット・オブライエン エリザベス・テイラー ジャネット・リー ロッサノ・ブラッツィ メアリー・アスター ルシル・ワトソン C・オーブリー・スミス エリザベス・パターソン レオン・エイムズ ハリー・ダベンポート リチャード・スタップリイ

ルイザ・メイ・オルコットの「リトル・ウイメン」の映画化で、マーヴィン・ルロイが、テクニカラー色彩映画として製作監督した1949年作品。

・「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」を見た後、これまでの「若草物語」映画化作品を見てみた。日活版は別として(四姉妹と言うだけでまるで別物。原作表記も無い)、最後に見た本作は何度か再見した作品で、本作が一番秀作という確信があったのだが。今回、これ以外の作品を見て、その確信が薄れた。特に最初のジョージ・キューカー(キャサリン・ヘプバーン主演)版は、原作が同じということを別にしても明らかに本作のオリジナル版であり、逆に言えば本作が明らかなリメイクであるということ。それはその後の作品(勿論、原作は同じ)と比べてみれば明白だ。勿論、エピソードに異同はあるが、構成はほとんど同じだ。キューカー版で最も能動的ジョーであると書いたが、本作のジューン・アリスンもフェンシングこそしないものの、充分能動的ジョーは意識されている(冒頭で塀を飛び越えるのを失敗してやり直すところなど)。
・僕はリメイクを下な見るつもりは無い。実際、僕が最も愛する監督たちの多くはリメイクの名手でもある。そしてこのマーヴィン・ルロイも明らかに優秀な監督であり、このリメイクも見事だ。ただ、感じたのは、今回のリメイクの特徴はオリジナルよりもソフトに感触よくしたということだろう。例えばローリーとエイミーの連続したショックも、キューカー版よりも柔らかく、しかもこの結末をジョーは予見していた雰囲気を出している(ローリーはジョーの洞察を否定したことを謝罪している)。ベスの死の描写も、ベスが最初に猩紅熱にかかったシーンもあっさりしているし、キューカー版における死後にベッドと人形に花を散らすシーンさえ無く、死の予感のシーンはあっても死のシーンは無い。
・ただし、一方で最も本作が秀逸なシーンは、その死を描く代わりに、ベスがジョーに死の予感を話すシーンの凄さだ。まさにマーガレット・オブライエンの真骨頂(前にも書いたが、「若草の頃」と全く対照的なキャラを熱演している)。
・ちなみに、本作のキャスティングは僕より一つ前の世代の観客にはベストだろう。(僕達の世代だとウィノナ・ライダー版がその世代のベストキャスティング) ジョーを演ずるアリスンは勿論、長女がジャネット・リー、末娘(原作だと)のエイミーがエリザベス・テイラー。ちなみに母親は「若草の頃」と同じメアリー・アスター(彼女も最も柔らかい母親だったと思う)。エリザベス・テイラーは鼻に洗濯バサミを挟むシーンが有名だが、ジョーに怒って原稿を焼いてしまうエピソードはないし、関係もソフトだ。ジャネット・リーも無難に演じているが、最も目立たないキャラかもしれない。(求婚を受け入れるシーンはキュカー版と同じだが、そのシーンのみが彼女のハイライトに思える)
・もう一つ、本作がソフトである肝心な点は、一家に宗教色を出さなかったことだろう。多くの映画はこの一家の厳しい宗教観を背景にしているが、それが一切無い。
・そして、この後の二作が、その後の物語(原作の続編以降)であるやがてジョーが学校を作るというエピソードも最初の二作には無い。原作を正編としているのだから間違いではないが、それにより、二作共、教授を引き止めるシーンに使われなくなってしまうという欠点もあった。

・とりあえず、僕が見る「若草物語」の映画はこれで終りと言うことで、全体を総括すると、初見の時に全く響かなかったウィノナ・ライダー版(現在見られる三番目の映画化)は、今回もかなり無難な演出だと思ったが、結果的にこの作品が小説「若草物語」に最も忠実な映画化と思った(おいおい、俺は原作読んでいないのにそんなこと言っていいのか?)。「若草物語」におけるいくつかのキーポイントがほとんどクリア(映像化)されていたと思う。初期二作との違いは、学校経営(叔母の家をジョーが相続した)ことによって、結末の教授とのシーンにしっかりした背景が出来たことは、四作見直した後ではかなり大きな要素だ。それにエイミーの役をキルスティン・ダンストとサマンサ・マシスと、年齢による二役にしたのも原作に忠実で成功している。キルスティン・ダンストが馬車の中でのローリーとの会話が結果的に実現してしまうのにも感心した。ちなみに、本作(アリスン版)では、これまでの僕の印象ではベスが末娘と思っていたのだが(もう少し幼いオブライエン)、今回見直して(前三作を見て、ベスが三女でエイミーが末娘と分かって)、注意深く見たつもりなのだが、エリザベス・テイラー演ずるエイミーとオブライエン演ずるベスのどちらが姉妹か、分からなかった。勿論、オブライエンが幼く、テイラーのおませぶりがその原因なのだろうけど。
・最新作の「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」は異色作・野心作であり、過去と現在を混在させる試みはそれなりに成功しているし、面白かったのだが、原作に忠実という意味では違っているだろう。
・結果、四作総て、一長一短あり。(今回僕がしたように)一度に全部見ても楽しめる作品と思う。
・感動的時間だった。



hirot15 at 22:32|PermalinkComments(0) 洋画 | 文芸

2021年01月27日

若草物語(1933)

1933年 アメリカ Little Women
ジョージ・キューカー監督 サラ・Y・メイソン/ビクター・ヒアマン脚色 ルイザ・メイ・オルコット原作 ヘンリー・ジェラード撮影 マックス・スタイナー音楽 キャサリン・ヘプバーン ジョーン・ベネット ポール・ルーカス エドナ・メイ・オリバー ジーン・パーカー フランシス・ディー ダグラス・モンゴメリー ヘンリー・スティーブンソン スプリング・バイイントン サミュエル・S・ハインズ メイベル・コルコード ジョン・デイヴィス・ロッジ Marion Batlou Harry Baresford ニディア・ウェストマン

父の不在を守る、スミス家の四人姉妹を主人公に、隣家の富豪の息子とその家庭教師を巡る恋愛騒動や、4姉妹の成長と死別を丹念に描いている。

・それで問題の実質的最初の映画化です。(それ以前も二度映画化されているけど、古過ぎて多分見ることは出来ない)
・ジョージ・キューカー監督でキャサリン・ヘプバーンの主演作は、マーヴィン・ルロイ監督、ジューン・アリスン版を凌ぐのか? 奇しくも今回見たDVDが淀川長治解説版だったので、淀川はヘプバーンに軍配をあげていますが、それはヘプバーン版の解説と言うことを頭において、しかも敢えてジューン・アリスン版をとりあげて、ジューン・アリスンとの出会い(初めて会いに行った時にアリスンが淀川の名前をあげて歓迎してくれた心配り)を語ったことで、実は淀川はアリスン版も気に入っていたのではないかと思わせた。
・実際、キャサリン・ヘプバーンのジョーは、これまで見た「若草物語」の中で最も能動的・行動的ジョーである。アリスンもライダーもシアーシャ・ローナンも能動的ジョーではあったが、これほど行動的なのはキャサリン・ヘプバーンだけだろう。
・その他のキャスティングも、一時代前ではあろうが、ジョーン・ベネット(エイミー)、フランシス・ディー(長女メグ)と、見覚えのある布陣だ。
・最後の重要人物であるベア教授の扱いは他の作品より穏便な雰囲気(喧嘩別れは描かれていない)。しかしいかにも穏便な人物で、早々と自分の意見を述べ、それはジョーの他のショックにより有耶無耶になってしまう(私が哀しいのはそんなことではないのよ)。エイミーとローリーの顛末も無難に受け流してしまっているし。本作が最も憎らしい叔母ではあるが、彼女も最後は大人しかった。
・正直、ジューン・アリソン版を見直さなければとは思うが、これが最も無難なヴァージョンなのかな、と思ってしまった。ベスの死の場面も奇麗に描かれてはいるが(彼女のベッドと残された人形に花びらをまくシーンは感動的ではあるが)、ライダー版でさえ泣けたのに、本作では涙は出なかった。



hirot15 at 22:31|PermalinkComments(0) 洋画 | 文芸

2021年01月26日

若草物語(1994)

1994年 アメリカ(コロンビア) Little Women
ジリアン・アームストロング監督 ロビン・スウィコード脚本 ルイザ・メイ・オルコット原作 ジェフリー・シンプソン撮影 トーマス・ニューマン音楽 ウィノナ・ライダー スーザン・サランドン ガブリエル・バーン トリーニ・アルバラード サマンサ・マシス キルステン・ダンスト クレア・デーンズ クリスチャン・ベール エリック・ストルツ ジョン・ネビル メアリー・ウィックス Florence Paterson コリー・クラーク

名作「若草物語」の4度目の映画化。戦地に赴いた父が不在のマーチ家で、母のもとで暮らす四人の姉妹。物語は彼女達のときめき、戸惑い、夢に生きる毎日、そしてやがてそれぞれの人生に翻弄されてゆく姿を、叙情的に、かつ新鮮に描いてゆく。

・封切り後に(多分DVDでだろうけど)見ている筈で、その時は全くピンとこなかったらしいのだけど(キャスティング以外記憶にさえ無い)、今回、駄目もとで見直してみて、それなりに感心した。確かにもう一歩突っ込んだ感動は無いのだけど、実に無難に原作にかなり忠実に映像化し、更に、改めてそのキャスティングの凄さは当時としてはまさに凄いと思う。多分、ウィノナ・ライダーも不祥事を起こす前だっただろうし、末娘エイミーのキルスティン・ダンストからサマンサ・マシスへのバトンタッチは、他の映画化ではなかった奇策で、それは成功していると思う(原作通り12歳から結婚の年頃まで忠実に描いている)。
・薄幸のクレア・デーンズに、長女のトリーニ・アルバラート、それに男優陣のクリスチャン・ベール、エリック・ストルツ、更にガブリエル・バーンという凄い布陣。母親はスーザン・サランドン。まさに最強のキャスティング。
・まあ、それでこの出来、というところで初見は失望したのでしょうか。しかし、決して悪い出来ではない。逆に言えば、(無難と言う以外は)欠点の無い佳作と思いました。




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2021年01月25日

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

2019年 アメリカ(ソニー・ピクチャーズ) Little Women
グレタ・ガーウィグ監督&脚本 ルイザ・メイ・オルコット原作 ヨリック・ル・ソー撮影 アレクサンドル・デスプラ音楽 シアーシャ・ローナン エマ・ワトソン フローレンス・ピュー エリザ・スカンレン ローラ・ダーン ティモシー・シャラメ メリル・ストリープ トレイシー・レッツ ボブ・オデンカーク ジェームズ・ノートン ルイ・ガレル クリス・クーパー ジェイン・ハウディシェル

しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続けていた。性別によって決められてしまう人生を乗り越えようと、思いを寄せる隣家の青年ローリーからのプロポーズにも応じず、自分が信じる道を突き進むジョーだったが……。

・「若草物語」の現在のところ(2020年)最新の映画化。僕は再映画化のマーヴィン・ルロイ版(1949年版、ジューン・アリソン、エリザベス・テイラー、ジャネット・リー、マーガレット・オブライエン)をこよなく愛している。(その前の映画化である1933年版、キャスリン・ヘプバーン他の映画化は未見)
・最新の映画化である本作に何となく期待して見たのだが、正直、前半はしっくりこなかった。既に知っているストーリーが語られているが、どうもギスギスした印象。やがて、見ながら、それが、僕の愛するルロイ版が、名匠(そして多分、男性監督)として名作を俯瞰的にまとめあげているのに対し(内容は総て描ききっている)、今回の作品は、女性監督として、姉妹のそれぞれに思い入れを強く描いた為に、それぞれの個性が強く描かれ過ぎた為にギスギスしてしまったのだと感じた。それゆえ、本作の方がルロイ版よりも姉妹それぞれの立ち位置がはっきりと描かれている。(ジョーとエイミーの確執も)
・残念ながら、後半までベスの存在感が薄いのだが(残念ながらマーガレット・オブライエンの可憐さは後半まで見えない)、しかし終盤はそれなりに存在感を出している。
・ジョーを演ずるシアーシャ・ローナンはジョーを熱演しているが、それにもかかわらず、長女メ(グエマ・ワトスン)やエイミー(フローレンス・ピュー)の存在感を圧倒することが出来ず(それが良いことかもしれないのだが)、そういう意味で、ジューン・アリスンの存在感の凄さを実感する(彼女は演出的でもあるかもしれないが、エリザベス・テイラーやジャネット・リーを圧倒していた)。
・それと、現在形と回想形を織りまぜた本作の形式は凝ってはいるが、凝り過ぎている気がした。
・それでも結果としては感動的ではあるが。

・日活版は見ているが、原作がオルコットとは思えなかった(単に四姉妹と言うだけ)。1994年のジリアン・アームストロング版(ウィノナ・ライダー、スーザン・サランドン)も見ているようなのだが、全く覚えていない(どうやら気に入らなかったようだ)。



hirot15 at 22:30|PermalinkComments(0) 洋画 | ドラマ