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2004/11/25
本BLOGの公開を
開始しました。
映画は、今世紀に入って
ほとんど劇場では
見ていません。
主にDVD、CS、BS放送
による観賞です。
表題後ろにあるのが評価で、
前は客観点(出来の良さ)、
後は主観点(好き嫌い度)。
A-Eにするつもりですが
客観・主観とも
Cが及第点として、
Aが最高評価
Eが最低評価
とお読みください。
よろしくお願いします。

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hiro


2000年09月

2000年09月30日

バレット・バレエ  CC

塚本晋也監督 塚本晋也/真野きりな/中村達也/村瀬貴洋/鈴木京香

 DVD発売に合わせての観賞、確か同時期に「双生児」も公開されていたと思いますが。やはり「バレット・バレエ」の方が塚本晋也的映画でした。
 前半は、それなりにストーリーを追える。携帯で歌を唱いながら拳銃自殺していった恋人。そのショックと若者のチンピラグループにカツアゲされた怒りからその復讐にと、ひたすら拳銃を探し求める主人公。どうやって恋人は拳銃を手に入れることが出来たのか。自分は何故、手に入れることが出来ないのか。チンピラグループで自殺志向の少女、チンピラでいきがりながらも一方で会社の入社試験を受けてしまうような不安定さを露呈する少年。
 しかし中盤、主人公が念願の拳銃を手に入れたあたりから、この映画のストーリー性は追いにくくなる。映画を引っ張るのは動機でなく、ひたすら「鉄男」以来の映像の勢いなのか。
 塚本演じる主人公が手に入らない拳銃を自作して殴り込みをかけるシーンがなかなか面白い。そこらへんはまだストーリーも追えるし、一方でヒロインの自殺志向として、地下鉄ホームの縁に立つシーンはひたすら恐ろしくも美しい。
 最後、主人公とヒロインが反対方向に分かれて歩き出すシーン。どちらも怪我をし、その歩き方は不自然なまでにわざとらしいのだが、しかし二人共にそれを続け、やがていつしか走り出すところで映画は終わる。
 欠点は多分かなり多いと思うけど。ワカラナイけど、納得した気分。この映画を受け入れてしまった。



at 14:08|PermalinkComments(0) 映画 

2000年09月28日

キッド  CC

ジョン・タートルトーブ監督、ブルース・ウィリス、スペンサー・ブレスリン、エミリー・モーティマー

 タートルトーブの作品はトラヴォルタの天使の映画以来と思うのだけど、その間に何か撮っていそうですね。多分、見逃しています。(*ハーモニー・ベイの夜明け)

 「マーキュリー・ライジング」以来子供ずいているブルース・ウィリス。「シックス・センス」は大成功でこの映画でどこまでその好調が維持できるか。ちなみに予告にはシャラマンとの新作が流れていた。

 多分、面白いだろうという予測がそれなりに当てはまって、しかしそれほど大きなプラスアルファがなくてちょっと残念だった印象。

 幻と実在が非常にきわどく処理されているけど、それを突っ込まずに、ただただ流れに身を任せたところが成功の要因でしょう。これでは矛盾をつくのが馬鹿らしくなる。

 ただ、それでも理解している人がいたら教えて欲しいのが、犬を助けるという行為によって、40歳の彼は変化したのか。大きくは変化しなかったようだが、変化の変遷を彼は感じることが出来たのか。
 犬を助ける前に、彼はそれが契機だと感じ、助けられれば変わると信じたが、実際、それが達成されたとき、彼は悟ったようにこれでは変わらなかったという。
 勿論、内容的にこれはかなり重要な部分なのだけど、表層的にも、ここが非常に描写が曖昧というか、残念ながらそこらでそうした表層に気を取られて、この文章を書いている今はむしろ内容的には正しい進行であることが分かるけど、見ているときはちょっと混乱していた。
 まあ、そういう部分に引っかからなければ、むしろ幸せな映画でしょう。
 でも、クライマックスからエンディングにかけては、そこまで描かなくてもいいんじゃないかな、なんて思いましたが。未来を信じるのはいいけど、見てはいけないと思う。という点で、このキッドも同じなんだけど、こうして書いていくと多分、どんどん矛盾点は出てくるでしょう。そういう映画ではない。ただ単に、解決から終わり方が甘かったな、と思ったにとどめましょう。

 その他、ウィリスが成功したTVキャスターに会いに行って顛末をうち明けるシーン、確かに分からないじゃない。でも、やっぱりちょっと唐突の感を否めない。ちょっとそこまでの描写を間違えたか、伏線の不足か、だいたい、TVキャスターがそれを信じて、そのまま放っておくだろうか。多分、キャスターでなく、最初の別れ際でももう一言、何かあればよかったのだと思う。

 このように、内容・脚本・演出的には、とても心地よい映画であることに成功した上で、しかしいくつかのひっかかりが感じられて、やはり少し退いたところで見てしまっている。

 しかし俳優達はなかなか良い。リリー・トムリンは懐かしい。いや、近年、何か一度見たような気もするけど、でも、この役はいかにも彼女らしく、とても楽しく見ていられる。
 ヒロインも悪くない。ただし、この映画でアピールするには、どこも一つ押しがなかった気がする。結局は主役二人の為に一歩退いていたのか。

 子役が上手いのは確かに特筆すべきかもしれない。可愛いのでなく、可愛くないデブなのに、これだけ主役でいられる。可愛く感じられる。

 しかしむしろ、この映画ではブルース・ウィリスがなにか非常にアメリカの正統的俳優に感じられてちょっと驚いた。
 例えばハリソン・フォードはインディなどで色々な往年の俳優のコピーをしても、やはりハリソン・フォードでしかいられず、良くも悪くもキャリアを重ねても彼にかわりはない。
 しかし、実はこの映画のブルース・ウィリスには、ゲイリー・クーパーのようなクラシックでどっしりした風格を感じてしまったのです。僕の勘違いかもしれないけど。それは冒頭からの嫌味な主人公の時、既に感じていました。
 勿論、それはブルース・ウィリスがクーパーのコピーをしたわけではなく、そうでないのに、ウィリスにクーパーを感じてしまったことが驚きなのです。こんなことは初めてかもしれない。

wad's

Zom's



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2000年09月14日

知らなすぎた男

ジョン・アミエル監督

 タイトルからヒッチコックの「知りすぎていた男」も含めたサスペンス映画のパロディだとは思っていたけど、確かにヒッチのそれもあるけど、むしろフィンチャーの「ゲーム」を思い出した。ただし、それよりこちらの方がずっと面白い。

 別にたいした映画ではない。ビル・マーレーを主演にして、レスリー・ニールセンの一連のパロディを少し大人しくした程度の映画を思い浮かべればいいだろうか。全体とすればニールセン物よりも質は高いと思う。たいして違わないが。

 物語は、自分の誕生日にイギリスに弟を訪ねたアメリカ人のビル・マーレー。しかし生憎弟はその晩はビジネス・ディナーで、その間の暇つぶしに参加型芝居を申し込んでやる。舞台はなく、街自体を使って参加者をヒーローに仕立て上げる芝居をしてくれるというもので、この設定が「ゲーム」を思い浮かべたのだ。多分、タイミング的にこのパロディを狙ったのだろうが、結果としてオリジナル以上の出来となってしまった。結局、芝居の筈が、ちょうど本物のスパイ事件と重なってしまった為、本人は芝居と思いつつ、いつの間にか本物の事件に巻き込まれていて、本人は気が付かないまま、本当のヒーローになっているのだが。勿論、調子良すぎるし、運転ひとつとっても上手すぎるけど、でも、ギャグ映画としてそれらは許せてしまい、何と言ってもマーレーの飄々とした味がなかなか良いのだ。それはまた、本家におけるマイクル・ダグラスのあがき方と対照的。
 他に「ニキータ」などのパロディもミエミエとはいえ、それほどオリジナル探しで楽しむ映画というより、全体の流れを楽しめましたね。監督としても「コピーキャット」よりずっと面白かった。おっと、こちらもコピーを題材としているのは奇妙な符号だ。


 主人公のビル・マーレーは文句無し。この人は同じ演技をしていても好きな時と嫌いなときがあるが、今回は僕は結構好きだった。ヒロインのジョアン・ウォーリーは再びキルマー姓が消えたようで。この作品も悪くはないけど、それほど良くもない。盛りは過ぎているという印象。それよりも可哀想なのはピーター・ギャラガーで、本当にこの人はこの濃い顔立ち、主役顔にもかかわらず、こういう可哀想な役が何と多くなったことか。今回も善人(というのも珍しいか)にもかかわらず、マーレーの電話に悩まされ、拷問されるだけの損な役。


 いくつか楽しいシーンはあるけれど、やっぱりクライマックスのロシア踊りでの人形ネタ。警官に無線機を渡して諜報員を名乗るシーンも好きだな。

 さて、何故、この作品が「ゲーム」より面白いかといえば、「ゲーム」は結局、「ゲーム」のままで、それが「ゲーム」のままであることが観客にも分かっていること。つまり、ゲームでは何があろうと不思議はないので、ゲームと割り切れば、それで済んでしまうのです。しかも映画自体の作りが結局、それを裏切らなかった。それがクローネンバーグなんかだと、なんかヘンだぞ、という気になるのでしょうが、でも、「イグジステンス」ではそれもそこまでで終わってしまったけど。

 しかし、この「知らなすぎた男」はそれを逆手に取っている。つまり、主人公が「ゲーム」における観客の気持ちになってしまっているのです。本物の事件になっているのに、本人はゲームと思い込んでいるからそれを楽しんでしまう。逆に観客はそれが(映画の中では)本物と分かっているのである程度のスリリングさを味わえる。勿論、信じられない偶然は数々起これど、それはそれでコメディというジャンルに逃げられるのだから、これし強い。少なくとも「ゲーム」よりは根本面で楽しめるのです。

at 15:05|PermalinkComments(0) 映画 

2000年09月13日

死魂

ウェス・クレイヴン製作

 それほど期待していなかったけど、やっぱりこれは駄目。思わせぶりなだけ。やたら雰囲気は出そうとしているけど、上滑りしている。
 ここのところ、一見面白いわけなさそうで実はそこそこイケるのに当たり続けていたのだけど(「メビウス」「ガラスの脳」「ブギーポップは笑わない」)、そうはうまくいかないということ。

 カーニバル、風船、義父、浸水、等々、キーワードは沢山あるのですけどね。

at 15:03|PermalinkComments(0) 映画 

2000年09月12日

ヴァイラス

 昔、似たようなタイトルの作品をファンタ映画祭で見た記憶があるのだけど、全然別物でした。タイトルも違っていたかもしれない。でも、あちらも回線を通じて侵入する怪物の話だったと思うから、内容的には似ている。当時はやっとパソコン通信、映画でもせいぜい「ウォーゲーム」の時代だったから。

 こちらは、とりあえずジェミー・リー・カーティスやドナルド・サザーランドやスティーヴ・ボールドウィンが主演しているので、まあB級のわりには豪華キャストという感じだけど。でも、サザラーランドも含めて、たまにA級でも頑張るB級の役者といったところでしょう。あ、もう一人、ジョアンナ・パクラも出ていたっけ。彼女がこんな映画に出るんだ。勘違いだったかな。

 物語は嵐で航海に失敗したドナルド船長が漂流中のロシアの無人線を発見、生存者がいないでロシアに引き渡せば莫大な謝礼金が出るということで張り切るが、そのロシア船は研究線だった上、わざと電気系統が切られている。電源を入れると船は自動で動き出し、人間を襲い出す。たった一人の生存した女も現れて、踏んだり蹴ったりの船長だが、彼女は突然の宇宙からパラボラを通しての侵入体が電気系統を乗っ取り、しかもロボットを勝手に作り、人間を捕まえて改造人間にされてしまうという。

 まあ、陳腐なB級SFスリラーの展開で、前半にそれなりの興味が保てても、やっぱりという感じで盛り上がらない。駄目男のサザーランドに正義の人のジェミー・カーティスが堅すぎて、しかしスティーヴ・ボールドウィンにもキャラクターが甘くてつまらない。唯一、アウトローっぽい黒人がちょっとだけ特徴を出しているか。
 サザーランドがお約束通り、敵に寝返るのだけど、簡単に改造人間として現れては面白くないでしょう。「ブギーポップ」では人間のままでエイリアンの味方をして主人公達を戸惑わせたけど、それくらいの戦略は欲しい物。それでもまだ陳腐だけど、サザーランドの味は出せたでしょう。
 凡作、です。

at 14:59|PermalinkComments(0) 映画 

2000年09月08日

レッドライン7000

ハワード・ホークス監督

 99年から2000年にかけて開催された映画祭では(「ヒットパレード」と共
に)短縮版の上映でした。それを見て全く初見の感動がなかったので、かなり憂鬱
な気分になり、もう一度ビデオで全長版を見なければならないと思いつつ、見直す
のが怖かった。何しろ、初見時はトム・クルーズの「デイズ・オブ・サンダー」と
比較して絶賛した感触が未だ残っているので、それが錯覚であったことを思い知る
かもしれないのだから(或いは「デイズ・オブ・サンダー」がそれほどまでにひど
い作品だったのか)。

 しかし怖々、やっと思い切って見直してみると、幸いなことにそれほど悪くはな
い。短縮版はやはりかなりひどい編集だったのだろう。というか、これだけの群像
劇でそれ以上に切れば、作品の質は成立はしなくなる。こういう場合はまるまるワ
ン・エピソード切るとかの方が良かったのだろうが、それぞれの微妙なからまり具
合からそれも難しい。実際は、切る以前に元々が描写不足だったのだから。

 まず最初のエピソードは、パットがオーナーを務めるチームにジムというベテラ
ン・レーサーがやって来るところから始まる。新参者か? 全体の主人公と言える
マイク(演ずるジェームズ・カーンはまだ「ゴッドファーザー」出演よりずっと前
の新人)と対面。しかしこの新参者に見えたジムは早々と最初のレースで事故死し
てしまう。そしてその葬式の間にやって来たのが、ジムと結婚するためにやってき
た婚約者ホリーだった。葬式に出ることを拒否したホリーは、ジムの死は自分のせ
いだと主張する。自分が愛する男は皆死んでしまう。これで3人目だと言うのだ。
ジンクス。ホークス映画におけるあからさまなジンクスは前作「ハタリ」における
サイのジンクスに続くものだ。
 彼女はとりあえず故郷に帰る金を作るため、パットの紹介によりリンディの酒場
で働くことにする。リンディもまた夫をレースの事故死で亡くした女。このリンディ
の店が、その後の展開で女達の梁山泊的存在であることが分かってくる。
 次に登場するのが、パットの妹ジュリーと、ジムの後釜を狙って登場するネッド。
ジュリーは颯爽とバイクで登場する男勝りの女(1965年という時代を思い浮か
べて見て欲しい)。ネッドはジュリーの口添えもあって合格。二人は深い仲となる。
 三番目のエピソードがフランス人美女ガブリエル(マリアンナ・ヒル演ずる愛称
ガビー)を伴って登場したベテラン・レーサーのダン。しかしダンはホリーに惚れ、
ガビーもまたマイクに惚れてしまう。
 マイクの方もガビーに一目惚れし、この二人がそれぞれにお互いを意識するシー
ン。マイクは彼女に惹かれながらも近づかず、一方、ガビーの方は火を借りる口実
としてわざわざ煙草の火を消してマイクに近づく。いかにもホークスらしい男の消
極と女の積極さ。もっとも、マイクの消極さにはケーリー・グラントからウェイン
に至る<火傷の経験>とはまた別の、プライドという根本的問題があるのだが。
 これでメンバーは揃った。その他、ジョージ・タケイがメカニックのメンバーと
してしばしば姿を見せるが残念ながらエピソードを振られてはいない。オーナーの
パットやリンディのエピソードもあまり突っ込まれない。
 このメンバーで展開するのは、まずネッドがマイクの下という立場に我慢が出来
ずにパットを裏切って移籍してしまうこと。ここで問題なのは、ネッドの方はパッ
トを裏切ったつもりでいるが、本当に裏切られたのはジュリーの方だということだ。
ジュリーの「彼は私でなく兄を棄てたの。兄には書き置きを、でも私には何も残さ
なかった」という台詞は悲しいが、彼女はいつか戻ってくるであろうネッドを受け
入れる気でいる。
 二番目が、ホリーのジンクスとダンの関係。ダンはホリーのジンクスを知りなが
ら、ホリーに求愛を続ける。一方、ホリーはダンを失うことを怖れている。
 三番目はマイクがガビーを愛しているが、彼女がふと彼をダンと比較する度にそ
れが許せず、ついにはダンを憎み出す。ガビーはそれを怖れてダンに警告するが、
二人が会っているところをマイクは目撃してしまい、怒りは絶頂に達する。
 次のレースでマイクはダンを追い込んでダンの車はコース外にはじき出されてし
まう。ここにマイクの殺意とホリーのジンクスが重なる。
 幸いなことにダンは軽傷ですみ、それがホリーのジンクスを崩し、一方自分の殺
意に悩むマイクはダンに殴られることで心を浄化する。
 ネッドもまた報いを受ける。彼もまた事故で片手を失うが、そんな彼を彼が避け
ようとするのを無視して会いに来るのがジュリーであり、彼女は彼を励まし、ネッ
ドは義手を付けてレースに復帰する。
 男達はレースが命、そしてそれを見守る女達がいる。

 この作品は「リオ・ブラボー」「ハタリ」と絶好調が続いた後、(「男性の好き
なスポーツ」という喜劇を経て)、次の「エル・ドラド」の為にウェインの体が空
くまでのつなぎとして製作されたという。題材も久々ながらホークスが趣味とする
カーレース物というのも、表向き、車に興味を持ち出した息子の為に作ったことに
なっているが、本音はやはり趣味を題材として楽しんだ「ハタリ」の楽しさをもう
一度と求めたのではないかという僕の想像が当たっているかどうか。
 しかしホークス自身としては、いくつかの断片的エピソードをまとめたら一つの
作品になるのではないかというアイデアは結果として成功しなかったことを認めて
いる。それはちょっと「コンドル」の製作過程を思い浮かべるが(ホークスは「コ
ンドル」のエピソードを全て実際にパイロット達から聞いた話だと語っている)、
それを一本の大木としてまとめあげた「コンドル」に対して、小枝ばかりにしてし
まったことがこの作品の敗因かもしれない。
 実際、前述のように展開を書いていくと、やはりエピソードの多さの割にその結
末一つ一つがお手軽な印象である。ジンクス、裏切り、嫉妬、プライド、それらは
エピソードの素材にはなっているが、充分に練られていないというのが正直なとこ
ろだろう。

 ホークスの定石としても、早々に描かれるジムの死は<友人の死>であり、ホリー
のジンクスは、ジンクスという形は前述したように「ハタリ」からの継承かもしれ
ないが、実質の中身は久々に「コンドル」に象徴される<ジョーって誰だ>の世界
を再び想起させる。久々にホークス悲劇が描かれるのか。「コンドル」においてジー
ン・アーサーの父が安全ネット無しで空中ブランコをしたのと同じ世界にこのレー
サー達もいて、そして女達はそれを見守るしかないのだ。違うのは、この映画の成
功面としては、それまで男の溜まり場であった酒場が、女の溜まり場としても機能
したということ。これは群像劇ゆえに生まれた手段の一つだったかもしれないが。
一方失敗面は、一見ドラマチックに、しかし実は簡単にジンクスを破らせることに
よってお手軽に解決させてしまったことだろう。そしてそんなお手軽さではホーク
ス悲劇には成り得ない。映画は勿論、結果的に悲劇性の欠片もないハッピーエンド
なのだ。

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ブギーポップは笑わない

金田龍監督

 全くの気まぐれで見てみた実写映画。原作は後から知ったところでは角川の
電撃文庫という多分、ジュブナイル文庫から出ていて、アニメ化もされている。
原作は懸賞小説に入賞して発表されたらしい。
 しかも監督は金田龍という、言われても作品名を聞かなければ思い当たらな
い名前。そう、「満月のくちづけ」の監督。これらを先に知っていれば手を出
さなかったかもしれない。
 しかし予備知識無しに見てみたら、これがなかなか面白い。勿論、青臭さは
あるのだが、ここらは仕方ない。それよりも、この構成がなかなか良いのです。
 構成として最悪だったのをこの作品の感想を書くところで思い出したのが「
エヴァンゲリオン」の映画版。あれは本当に独りよがりの最悪なものだった。
ほとんど映画を見ていることが前提でなければ分からない(見ていない人が分
かったと思うのは思いこみに過ぎない)ものだった。
 しかし、この「ブギーポップ」は断章は別にして、だいたい4つのエピソー
ドのつらなりなのだが、これが実に上手い。
 特に素晴らしいのが、最初の章かもしれない。何しろ、ここではほとんど何
も起こらないのだ。一人の少年の視線で、彼の恋人が突然、別人格を持ってし
まう。それがブギーポップ。本人は非常に子供っぽいきゃぴきゃぴの少女が、
ブギーポップに変身すると、ただ屋上から何かを見張り続ける。少年はそんな
ブギーポップにつき合いながら、元人格の少女よりもブギーポップの方に惹か
れていくのが危ういかもしれない。そして突然、ブギーポップは解決したと宣
言して、少年の元を去っていくのだ。後に残るは元の少女だけ。しかし彼は彼
女に再び話しかけたところで二人の関係が一歩前進したことを感じるのだ。

 第二章。ここで現実的なのは、始まりがブギーポップだった少女が大学生に
なっているという少し先から始まるのだが、ここで既に彼女は第一章の少年と
別れてしまっているらしいこと。そんなものなのか。そしてここで彼女が偶然
再会した少年の回想、彼の恋人の失踪事件を聞くのだが、その回想がピッタリ
と第一章の時間と重なる。第一章には、何も起きない中で様々な布石が打たれ、
その後の章の断片が描かれていたのだが、ここに語られるのは、二人の少年と
関係のあった少女(彼女は第一章の少年とも友達だったのだが)が誰か(エコー
ズと彼女は呼ぶ)をかくまったことにより、結局は消えてしまう話だ。三角関
係に謎の四人目が介入し、彼女はそのかくまった男が消えてしまったとパニッ
クにおちいり、しかしその直後に彼女自身、消えてしまう。彼女は男と共に去っ
たのか、それとも。

 第三章は、一人の不良少女を見つめ続ける少女の話。不良少女は、何かを追
い求めている。一方で、校内では密かに謎の失踪事件が頻発しているらしい。
少女はあたしの周辺であたしに関係なく何事かが起こっていることを自覚して
いる。不良少女を見つめ続けることを通して。この不良少女が(ほとんど見た
ことはないのだが、イメージとして「スケバン刑事」のごとくカッコいい)

 そして第四章、全ての真相が明らかになり、また派手なアクションもある文
字通りのクライマックスとなる。しかしここでも異星人と人間との恋物語とい
うテーマが見え隠れしている。アクションとしては無難なところだが、全体と
しては「ゼイラム」などよりずっと面白い。「満月のくちづけ」を見返して面
白いとは思わないだろうが、正直、ここまでしっかりまとめられるようになっ
たか、という感慨はある。処女作でその才能を決めつけてしまってはいけない
な。
 勿論、原作の味はあるだろうが、この映画は非常によくその味を活かしてい
る。もしかして「1999年の夏休み」よりも面白いかもしれない。少なくと
も、少年ドラマシリーズはここまで来た、という感慨。

 役者としては少女達が非常によく頑張っている。男優も悪くないけど、やっ
ぱり一人一人の少女達の個性がいい。何しろ、一つ後ろの委員長が非常に印象
的なのも、「桜の園」に近いところまでいっているかもしれない。

 とても気に入ってしまった。

at 14:46|PermalinkComments(0) 映画